ソフトバンクとの戦略的提携でLINEモバイルはどうなる?

2018.02.02 格安SIM ライター:__agar

1月31日、docomo回線を利用したMVNO事業を展開している「LINEモバイル」が、ソフトバンクとの”戦略的提携”に向けて合意したというニュースがありました。


結論から言えば、現時点ではあくまで両社の今後の関係について合意されただけで、具体的に今後LINEモバイルのサービスにどのような影響があるのかはどちら側からも発表されていません。”買収”とも違いますし、ユーザー視点でもまだ何らかの判断をするのは早計でしょう。

この記事を書いているのは、発表から2日経った2月2日です。今の時点で分かっていること、両社の発表内容などについて整理し、まとめておきたいと思います。

LINEモバイル・ソフトバンクからの発表内容


まず前提として、今起きていることを整理しておきましょう。

1月31日に発表されたのは、LINEの子会社でありMVNO事業を行っているLINEモバイル(株)とソフトバンク(株)が、戦略的提携をしていくことに合意したということです。現時点ではまだ提携が始まっているわけではなく、詳細はこれから協議していくとしています。

ちなみに、ソフトバンク側は持ち株会社のソフトバンクグループ(株)ではなく携帯電話事業を行うソフトバンク(株)名義での発表で、実際の提携予定についても同様です。ソフトバンクグループ(株)ではなくソフトバンク(株)からの出資となっている点からも買収を目的とした動きではない可能性が高いのではないでしょうか。

予定する提携内容は「LINEモバイルが実施する第三者割当増資をソフトバンクが引き受ける資本提携」と「MVNO事業推進のための業務提携」とされていて、両社のリリースは今後のLINEモバイルのさらなる発展を意識した内容となっています。


ソフトバンクのプレスリリース

比較的あっさりした内容のソフトバンク側のプレスリリースから見てみると、重要なポイントは以下の3点。

・取引完了後のLINEモバイルの出資比率は、LINE 49%・ソフトバンク 51%となる予定
・時期としては2018年3月頃の取引完了を予定
・LINEモバイルが現在提供しているサービスを急激に方向転換するものではない

本文中には、LINEモバイルの現契約者に対してのサービスに影響を及ぼすものではないこと、LINEモバイルの代表取締役社長は嘉戸彩乃氏が留任することなど、現在のLINEモバイルのサービスや方針を大きく揺るがそうとしているわけではないことが繰り返し説明されているのと同時に、むしろMNOであるソフトバンクのノウハウを活かしてLINEモバイルをより成長させていくという意図が伝えられています。


LINEモバイルのプレスリリース

LINEモバイル側のプレスリリースはもう少し突っ込んだ内容になっていますが大筋は同じで、LINEモバイルの成長・拡大を目的とした取引であること、そして現在のLINEモバイルの事業は好調であることが伝えられています。

ストレートな言い方をすれば経営が傾いているところに手を差し伸べたというような話ではなく、両社の思惑が一致したからこそ戦略的提携という対等的な関係を結ぶんだ、ということを説明されているのですね。

両社のメリットは?


では、戦略的提携を結ぶことによって両社に何のメリットがあるのでしょうか。

LINEモバイル側から見たメリットは比較的分かりやすく、出資を受けられるということに尽きます。
昨年度のLINEの決算では、モバイル事業に関しては拡大のための投資が大きな負担となっていました。群雄割拠のMVNO市場での勝負を降りるためではなく、より「LINEモバイル」を発展させて勝ちに行くつもりだからこその第三者割当増資というわけです。

一方ソフトバンク側にとっては、LINEモバイルの株を51%保有して同社の舵取りに関して大きな影響力を持つことにどのような目的・意図があるのかは発表内容ではほとんど見えていません。

なにせどちら側のリリースを読んでも一環して”LINEモバイルの成長”についてしか語られていませんし、LINEモバイルの既存契約者をSoftBank・Y!mobileブランドに巻き取って契約者数を得るつもりなら納得も行きますが「それはない」ということも歯切れ良く書かれています。

これではまるで慈善事業ですがもちろんそんなはずはないわけで、後はフタを開けてみて”シナジー効果”が現れてきた頃に納得が行く話なのでしょうが、私の読みとしてはソフトバンクの大きなライバルであり、携帯電話事業での近年の展開の仕方も似ているKDDIの動きを振り返ると、今回のLINEモバイルとの戦略的提携の真意が見えてくるように思います。

ソフトバンクが欲した物は「KDDIにおけるBIGLOBEモバイル」ではないか?

ここからはあくまでケータイオタクたる筆者の持論なので話半分にお読みいただきたいのですが、ソフトバンクがLINEモバイルとの提携を通して得たい物は、メインブランドであるMNOとしての「SoftBank」や、サブブランドの「Y!mobile」とはまったく違った戦い方のできる3つ目の看板なのではないかと思います。

分かりやすく例えるなら、いえ、ほぼ確実に意識してトレースしているであろう図式を挙げるなら、KDDIグループにおける「au」「UQ mobile」「BIGLOBEモバイル」の3ブランドの関係です。

言うまでもなくKDDIの携帯電話事業の中核は国内2位の大手キャリアである「au」ブランドですが、KDDI傘下には子会社のUQコミュニケーションズが運営する「UQ mobile」や同じく子会社のビッグローブが運営する「BIGLOBEモバイル」も抱えています。


このうちUQ mobileに関しては、MVNOに対抗する「格安スマホ」というジャンルで争うブランドでありながらも、回線品質や実店舗の展開など様々な面でMNO的な戦い方をすることで競争力を高めたいわゆる「サブブランド」です。
ソフトバンクにとっては(成り立ち的にMNOであるという違いはあれど)Y!mobileブランドがまさにこの位置付けで、両ブランドは実際に近い顧客層を奪い合っています。


一方の「BIGLOBEモバイル」に関しては、同じKDDI傘下のMVNOでありながらUQ mobileのやり方とは明確に異なる方針で運営されています。

自社網だけでなく買収前から使っていたdocomo網でのサービスも継続しているどころか新規契約も受け付けていて巻き取る気配もないあたりは「どこの回線を使っているか」をベースにした従来の考え方でのシェアにはこだわらず、KDDIグループとしていかに他グループから契約者を取っていくかというMVNOが台頭している現状に即したドライな考え方と言えますし、家電量販店での即日開通サービスこそあれど、UQ mobileの「UQスポット」のようなMNO的なショップ展開はしていません。

サービス内容や料金など様々な面で、KDDIグループでありながらあくまでサブブランドではなく純粋なMVNOとしての戦い方をしているわけです。この立ち位置にあたるブランドは現状のソフトバンクには無いでしょう。

ソフトバンクにとってみれば、auにはSoftBankブランドを、UQ mobileにはY!mobileブランドを真っ向からぶつけることができる一方、KDDIグループにおけるBIGLOBEモバイルのような「MNOの系列でありながらMVNOの面を被る」ことができるブランドは抱えていらず、これを欲していたのではないでしょうか。

単にKDDI傘下のBIGLOBEモバイルに対抗するためという以上に、世に広まるすべてのMVNOと互角に戦うためには、どうしてもMNO的にならざるを得ないサブブランドではなく、本物のMVNOを飼い育てる必要がソフトバンクにはあったのだと思います。


それは徹底的にサポートコストを削りターゲット層を絞ったやり方という意味でもそうですし、社会的責任や立場の違いからMVNOで出来てもMNOやそれに近いポジションのサブブランドでは取りにくい行動、やりにくいサービスというものもあります。

例えば、特定のサービスを使う時の通信量だけを無制限にするカウントフリー機能。MVNOではじわじわと広まりつつありますが、通信の秘密と表裏一体で慎重な運用が求められるサービスです。
安さばかりの話ではなく、こういったMNOの立場では手を出せない、しかしユーザーにとっては魅力も大きい武器を持ったMVNO各社と戦うには、MNO・MVNO両社の中間的性質を併せ持つサブブランドではなく純粋なMVNOも傘下に持つことが強みとなります。

つまりは、MVNOを求めるユーザー層すべてが必ずしもサブブランドで納得するわけではなく、MVNOの攻勢を食い止めるもう1つの武器として自らMVNOも持つのが近道というのが結論。

この考えに沿ってLINEモバイルを評価してみると、サービス開始当初からカウントフリー機能に力を入れているのはもちろん、高い普及率を誇る「LINE」アプリや関連サービスとの連携を軸に据えており「MVNOならではの強み」を持っているという点では申し分ないパートナーでしょう。

さらにネットでの申し込みをメインに展開してきているので、家電量販店などでの取り扱いはありますが例えば「楽天モバイル」などのように本腰を入れた自前での店舗展開はしていません。これもソフトバンク側の戦略と相性が良いと思われます。
Y!mobileに取り込みたいユーザー層を不必要に奪い合う可能性がないので、第一にSoftBank、第二にY!mobile、どちらにもなびかない層には第三の武器としてのMVNO、といった三段構えの布陣を組むための条件が揃っているわけです。

まとめ


まとめると、LINEモバイルとソフトバンクの戦略的提携はすぐに今のLINEモバイルの在り方を変えるものではないことが発表内容から明らかです。

そして、そこから読み取れるソフトバンク側にとっての提携のメリットを考えると、むしろソフトバンク網への切り替えやY!mobileのようなサブブランド戦略をLINEモバイルでも取るのはナンセンスだと思われ、「現行のサービスでのLINEモバイル」こそがソフトバンクの求めている物だと私は考えます。

そういった意味では、LINEモバイルの公式アカウントやメールなどで契約者向けに配信されている「今後もそのまま使えるから安心してね」という趣旨のメッセージは額面通りに受け取っても良いのではないでしょうか。