「Galaxy S9(SM-G960F)」レビュー。海外版S9を1ヶ月使って感じた長所と短所

2018.04.12 端末レビュー ライター:__agar

サムスンのフラッグシップモデル「Galaxy S9」の海外版を購入し、約1ヶ月にわたり実際に使ってきました。購入直後にもファーストインプレッションとして簡単にご紹介しましたが、使い込んで見えてきた長所と短所も踏まえ、改めて評価しておきたいと思います。


※本記事は、技術基準適合証明を取得していない端末の日本国内での利用を推奨するものではありません。

「Galaxy S9」とは?


Androidスマートフォンの黎明期から、常に最新のスペックや機能を盛り込んだフラッグシップ端末として業界をリードしてきたGalaxy Sシリーズ。近年はかつてのように性能面で他社との差が大きく開くということは少なくなりましたが、例えばAndroid OSの標準機能となる以前から独自に作り込まれていたマルチウィンドウ機能のような機能面での取り組みであったり、いち早く採用した曲面ディスプレイの「エッジスクリーン」、狭額縁設計の「Infinity Display」といった先進的な設計など、依然としてトレンドを牽引する存在であり続けているシリーズです。

そんなGalaxy Sシリーズの2018年モデルである「Galaxy S9」は一見すると前機種である「Galaxy S8」によく似ており、キープコンセプトな機種という印象。

昨年の「Galaxy S8/S8+」が、サムスンのもう1つの看板シリーズであるGalaxy Noteシリーズにおける「Galaxy Note7」の発火・爆発騒動からの起死回生の状況での登場かつ、同シリーズのアイコンとも言えた物理ホームボタンすら撤廃するほどの全面的な刷新で鮮烈な印象を残したのと比べると、やや華がないと思われるのも無理はないかもしれません。

しかしながら、決して1年分のスペックアップや前機種のフィードバックを受けての設計の見直しを行っただけ、というわけではなく、S9/S9+の両機種に搭載されたスマートフォンとしては非常に珍しい可変絞りのレンズを搭載したカメラや、シリーズ初のスピーカー、S9+のみの搭載となりますがこちらもSシリーズでは初のデュアルカメラなどでテコ入れを図っています。

カラーバリエーションは Lilac Purple / Midnight Black / Titanium Gray / Coral Blue の4色で、海外での正式な発売日は2018年3月16日。一部地域での先行予約分などは1週間ほど早くデリバリーされていました。なお、日本での発売予定については本記事の執筆時点では未発表です。

「Galaxy S9/S9+」発表。S8のコンセプトを引き継ぎつつブラッシュアップ

パッケージ・付属品など

まずはパッケージおよび付属品からご紹介。


S8やNote8などの昨年モデルと同様、黒地の紙箱に機種名が青い箔押しで入ったパッケージです。開封の様子など詳細は割愛しますので、気になる方は前回の記事をご覧ください。

「Galaxy S9(SM-G960F)」ファーストインプレッション+S8・A8とのサイズ比較


同梱品をすべて並べてみました。本体の他には、ACアダプタ、USB Type-Cケーブル、イヤホン、交換用イヤーピース、OTGアダプタ、micro B→Type-Cアダプタ、SIMピン、クイックスタートガイドが付属しています。


Galaxy S9は販売地域ごとに、SoCや対応バンドなどの異なるいくつかのモデルが存在します。筆者が購入したものは欧州向けの「SM-G960F」で、SnapdragonではなくExynosを搭載しているモデルが欲しかったこと、発売時点で比較的早く入手できそうなモデルであったことからこちらを選択しました。

海外版Galaxyを輸入した経験のある方はご存知かと思いますが、仕向地によっては転売対策のための「リージョンロック」があることに注意。欧州版がまさにそうで、このロックがかかっているモデルは販売地域内で一定時間の通話を行ってからでないと本来の販売地域外では利用できない仕様です。

今からS9を購入するのであればリージョンロックのないアジア向けのモデルを購入するのが安心かと思いますが、もし何らかの理由で欧州版などリージョンロックのあるモデルを選ぶのであれば、このロック解除のための通話を行ってから発送してくれる販売者を探しましょう。筆者は今回、イギリスの通販サイト「Clove」から購入しましたが、こちらはしっかりリージョンロック解除のための条件をクリアしてから発送する旨を明記して販売されており、実際に問題なく処理された状態で手元に届きました。

外観

続いて、「Galaxy S9」の外観・デザインを見てみましょう。レビューに用いた端末のカラーは「Midnight Black」です。


前面のデザインはほぼS8と変わりません。かつてのように一目で「これはGalaxyなんだ」と分かるようなボタンが配置されているわけではなくロゴなどもない、普通に考えればよくある一枚板のはずなのですが、左右の端がなだらかにカーブした「デュアルエッジスクリーン」と角のR、変則的な縦横比による細身のフォルムなどでどことなく“最近のGalaxyらしさ”は感じられます。


ガラスパネルに覆われた背面のデザインも概ね同じですが、指紋センサーの位置が昨年の機種よりも下側に移動しています。やはりS8/S8+ユーザーからはかなり不評なように見受けられた点でしたので、ユーザーからのフィードバックを反映した改良でしょうか。



右側面には電源キー、左側面には音量キーと「Bixby Home」を起動するためのBixbyキーを配置。電源キーのちょうど反対側にBixbyキーがあり、不用意に押してしまう……という問題は昨年モデルと変わらず解消されていませんが、S8/S8+では発売後のアップデートで追加された「Bixbyキーを無効にできる設定」は、S9ではあらかじめ用意されています。



上部にはnano SIM / microSDトレイ、下部にはイヤホンジャックとUSB Type-C端子、スピーカーが並んでいます


デザインに関しては、S8からの買い替えでは驚くほど代わり映えしないというのが率直な感想。しかし、この変化の無さはある意味では美点なのかもしれません。

イヤホンジャックの廃止しかり、ディスプレイのノッチしかり、最初にやったメーカーにとっては何かしら意味のあること……というよりも他に実現したいことがあったのでしょうし、良くてそのための通過点、下手をすれば“苦渋の策”だったということもあり得るはずです。しかしそれが影響力のあるメーカーだと時に誤解が生じて、その本質ではない部分だけが他社に波及してしまうことも後を絶たず、歪んだトレンドが形成されてしまっているケースは多々見かけます。

それを踏まえてS9を見ると、先に書いたような今ある「目的を見失っている歪んだトレンド」に乗っていない取捨選択の上手さはもちろん、あえてS8から必要以上の変更をしていないのはかえってデザインに説得力があると感じました。

普通のメーカーならこれほどまでに、スマートフォンに興味のない人がちらっと見たら「去年のと一緒」としか思えないであろうものは出せないはず。それが自社の看板となるフラッグシップであればなおさらです。それでもサムスンは「変更のための変更」を決してせずにS9をこのような形で仕上げてきたというのは、なかなか出来ることではないだろうなと思います。

そんなわけで、発表時は「S8と変わらないじゃないか」とがっかりしたデザインも今はそれなりに納得しています。ただしS8のサイズ感が素晴らしかったこと、それがあまりにも見かけはS9とよく似ていることから、「見た目はほぼ同じなのに、若干持ちやすさが落ちているし重いな?」と些細な点ながら退化を感じてしまう節があるのは少しだけ残念。もっとも、それもごくわずかな差ですし、ほぼS8の感覚で使える筐体に収まった最新機種を改めて手にできるのは歓迎すべきことでしょう。

スペック・動作

「Galaxy S9(SM-G960F)」のスペック表

SoCExynos 9810 2.9GHz+1.9GHz オクタコア
RAM4GB
ROM64GB
画面サイズ5.8インチ
画面解像度2,960×1,440(WQHD+)
バッテリー3,000mAh
OSAndroid 8.0
アウトカメラ約1,200万画素 F1.5-2.4
インカメラ約800万画素 F1.7
LTEバンドBand 1/2/3/4/5/7/8/12/13/17/18/19/20/25/26/28/32/38/39/40/41/66 ※1
サイズ約147.7 × 68.7 × 8.5mm
重量約163g
カラーLilac Purple / Midnight Black / Titanium Gray / Coral Blue

※1:欧州向けの「SM-G960F」および「SM-G960F/DS」は、同一型番の中でも仕向地により対応バンドが異なります。表中の仕様は英国版のものです。

S8の時はSnapdragon搭載の国内版を使っていた筆者ですが、Galaxy Sシリーズ/NoteシリーズはExynos版の方が動作に関しては評判が良いことが多く気になっていたので、今回はExynos 9810搭載の欧州版を選択。同じ欧州版の「SM-G960F」の中でも仕向地によって若干仕様が異なるようなので(参考記事)、対応バンド的に使いやすいUK版を選びました。



最新のハイエンド機だけあって動作は快適そのもの。強いて言えば、S9+にはNote8と同じ6GBのRAMが搭載しながら、S9は4GBのままというのはやや納得行かない仕様です。Galaxyシリーズのソフトウェアは比較的メモリ使用量が多めですし、ここは惜しまず仕様を揃えて欲しかったところ。


動作は素晴らしいのですが、電池持ちには不満が残ります。同じように使っても体感的にはSnapdragon版のS8よりは明らかにバッテリーの減りが早い印象で、スリープ状態での消費量は問題ないものの使用中の消費が激しく、SNSを見ている程度の軽い使い方でもみるみる電池残量が減ってしまいます。バッテリーサイズの大きいS9+なら多少違ってくるのかもしれませんね。

UI・ソフトウェア



UIはNougat時代のものからさほど大きな変化はなく、昨年モデルからの買い替えでは違和感なく使い始められました。


前機種と同様にナビゲーションバーの背景色を変えられます。おそらく有機ELの焼き付き防止のため、やはり今回も黒は選択肢として用意されていませんでした。


S8からS9への買い替えというよりも国内版から海外版への買い替えという視点で見ると、サムスン純正アプリの一部がプリインストールではなくセットアップ時に選択してインストールできるようになっていたり、先述のBixbyキーの無効化ができたりと、クリーンな状態で使えるソフトウェアなのは嬉しいですね。


後述のカメラ機能と並んで、大きな進化を感じられたのが生体認証。指紋・顔・虹彩の3要素での認証方式を揃えている点は前機種の仕様を踏襲していますが、使い勝手は向上されています。

まず前提として軽く触れておくと、S8では「顔認証と虹彩認証のどちらか+指紋認証」しか同時に設定できなかったので、3種類の認証方式があるとは言っても2つまでしか実質的に使えませんでした。

S9ではこれに対する答えとして「インテリジェントスキャン」という新機能が搭載され、顔認証と虹彩認証を状況に応じて自動で使い分けられるようになりました。インテリジェントスキャンと指紋認証は同時に設定しておけるので、ようやく3つの認証方式をフルに使えるようになったというわけです。

3種類の認証方式それぞれの速度・精度も申し分ありませんし、一番オーソドックスな指紋認証に関しても、センサーを数回撫でるだけで指紋の登録が済むようになるなど改良されており、どの方式の生体認証を使いたい人にとっても満足できると思います。


Galaxy初のステレオスピーカーも優秀。純粋なステレオスピーカーではなく、端末下部のスピーカーと上部の通話用スピーカーを組み合わせて運用しているタイプではありますが、音はかなり綺麗です。

カメラ


Galaxy S9に搭載される約1,200万画素のカメラは、スマートフォンのカメラとしては非常に珍しい可変絞りのレンズが特徴。F1.5とF2.4の2段階に切り替えられる仕様で、マニュアル撮影のための「プロ」モード以外ではシーンに応じて自動で最適な絞り値が選ばれます。この他にも960fpsでのスーパースローモーション撮影に対応したりと、機能面・性能面での改良が施されています。


イメージセンサーはどこの物を使っているのか気になったのでアプリを入れて確認してみたところ、「SAK2L3」というサムスン製のセンサーでした。SONY製センサーだったという情報もあるので、これまでにも例のある話ですがおそらく2種類のセンサーが混在しているのでしょう。完全にランダムなのか、モデル・仕向地ごとにある程度決まっているのかは気になるところです。

以下、実際に「Galaxy S9」で撮影した写真です。













ここまではいずれも「自動」モードで撮影した写真です。センサーサイズの兼ね合いもあってF1.5とF2.4でボケ量が劇的に変わるということはないので、基本はオートで設定を任せてしまって良いでしょう。可変絞りで表現の幅が広がるというよりは、暗所でシャッタースピードを稼いだり、逆に明るい時間帯の遠景などでシャープな描写を得たい時に効いてくる印象です。


(自動モードで撮影)


(食事モードで撮影)

この1ヶ月間、オートでの露出設定やホワイトバランスに納得行かないシーンがあまり無かったので「プロ」モードなどはあまり使わず、ほぼ「自動」モードで撮ってきましたが、「食事」モードは時々使っています。料理の写真をSNS用などある程度強調して撮りたい時には便利なモードで、勿論その性質上どうしても苦手とする被写体であれば画が破綻してしまうシーンもあるものの、他社の同種の機能と比べると使いやすいセッティングだと感じます。

「Galaxy S9」のカメラについての紹介は以上ですが、用意しておいた飯テロ画像作例が余ってしまったので、以下に添えておきます。











まとめ


実際に使ってみて感じた「Galaxy S9」の長所・短所をまとめると、まず長所は、最新のハイエンド機ならではの文句無しに快適な動作、優秀なカメラやスピーカー、「インテリジェントスキャン」機能の導入で使い勝手が良くなった生体認証といったところでしょうか。一方で短所としては、やはり電池持ちが弱点です。

従来のGalaxyシリーズのお約束をひっくり返して全面的に刷新した攻めのモデルチェンジだった昨年のS8に対し、それをブラッシュアップして更に完成度を高めたのがS9という印象です。良くも悪くも変わらないのでS8ユーザーが無理に買い替える必要はないかなと個人的には思いますが、まだS8/S8+/Note8あたりの機種を持っていないのであれば、今から買うなら断然S9/S9+をおすすめします。