横浜コミュニティサイクル「baybike」でエリアの隅々まで走ってみた感想

2018.07.10 乗り物 ライター:__agar

ドコモ・バイクシェアが横浜市からの受託で運営する自転車シェアリングサービス「baybike(ベイバイク)」。筆者は先日、1日乗車券を利用してサービスエリアの隅々までbaybikeで走ってみました。実際に同サービスを利用してみた感想をお伝えします。

「baybike」とは?


「baybike(ベイバイク)」は、NTTドコモ傘下のドコモ・バイクシェアが運営する自転車シェアリングサービスです。横浜市中区・西区・神奈川区・南区に設置された計62ヶ所(2018年6月末時点)の「ポート」と呼ばれる無人の専用駐輪場で、ICカードやパスコードを使って好きな時に自転車をレンタルできます。返却先に制限のないシステムで、目的地周辺のポートに自転車を返却する乗り捨てが可能。30分刻みの料金プランと合わせ、短距離・短時間での都市部の移動に適したシステムとなっています。

同様のシステムは、同じくドコモ・バイクシェアが運営する「ちよくる(東京都千代田区)」や「DATE BIKE(仙台市)」などの各地のコミュニティサイクル・シェアサイクルで利用されていますが、最初にスタートしたのは横浜の「baybike」です。2011年に「横浜都心部コミュニティサイクル社会実験」としてNTTドコモがみなとみらい地区・関内地区を中心に実証実験としてサービスを開始し、2014年に事業化。現在に至るまで約7年の歴史がある、日本国内の自転車シェアサイクルサービスとしては比較的古い部類のサービスです。

baybikeのエリア


(エリアの北端に近い「横浜市中央卸売市場」周辺)

2018年6月末時点でのbaybikeのエリアをざっくりと説明しておくと、北側は横浜駅や「横浜市中央卸売市場」の周辺まで、南東側は「山下公園」や「港の見える丘公園」の周辺まで、西側は「野毛山動物園」までといった範囲。観光スポットが集中する海沿いのエリアを中心に広がっており、見方を変えると、高層マンション群のあるみなとみらい地区北部や、関内・関外地区のオフィス街もカバーされています。

前身である「横浜都心部コミュニティサイクル社会実験」が開始した当時の横浜市のプレスリリースを見ると、当時のポート数は現在の4分の1以下の14ヶ所であるものの、カバーされている範囲は(特に南北方向に限れば)意外なほどに変わりません。やみくもに見かけ上のサービスエリアを広げるのではなく、それだけ堅実にポートの密度を上げて利便性を追求してきたということでしょう。

実際のところ、ランドマークタワーやパシフィコ横浜、よこはまコスモワールド、赤レンガ倉庫、大さん橋、山下公園、横浜マリンタワー、中華街、港の見える丘公園など、このエリアの観光スポットの大半、いわゆる県外の人がイメージするような“横浜っぽい部分”は大体カバーされているので、観光用途ではまず不都合はないかと思います。


(横浜駅から最も近いポートがある商業施設「横浜ベイクォーター」)

惜しいところとしては、ターミナル駅である横浜駅や、東急東横線から直通するみなとみらい線の終点である元町・中華街駅など、要所でありそうな駅の近くに使いやすいポートが不足しているのが残念。特に横浜駅近辺は深刻で、駅周辺にある2つのポートのうち「横浜ベイクォーター」という商業施設の中にあるポートは、建物の営業時間の関係で朝8時まで開かないため、通勤利用など早朝から使いたい場合にはやや不便です。

baybikeの料金


他地域のドコモ・バイクシェアのサービスと同様に、30分単位の料金体系となっています。都度課金の「1回会員」の料金は150円/30分(税別、以下同)ということで、都内のサービスと同水準。ドコモ系でも「DATE BIKE(仙台市)」などもっと安いサービスはありますが、特別高いというほどでもないレベルでしょう。

一方、「月額会員」の料金が2,000円であるのに対して、会員登録不要の1日乗車券「30くりパス」が1,500円するというのはややいびつな料金体系でもあります。サービスコストも異なるでしょうから同レベルまで下げて欲しいとは言わないまでも、他の都市部のシェアサイクルと比べても観光色の強いサービスだけに、観光客向けの1日プランには改善の余地があるのではないかというのが個人的な意見です。

Source:baybike

車両・ポートの仕様


実証実験の開始から2015年までは電動ではない通常の自転車が使われていましたが、現在は他のエリアと同様の電動アシスト自転車に置き換えられています。

車両はブリヂストンの「bikke MOB」という車種がベースのようです。20インチの小径タイヤと低いフレームのおかげで、どなたでも跨ぎやすいのではないでしょうか。内装3段の変速機が付いています。市販車そのままというわけではなく、前カゴの高さの違いや、後部に装着された広告スペースを兼ねたガード、そしてドコモレッドに塗られたフレームなど、一目でシェアサイクルだと見分けられる仕様です。


複数の車両を乗り継いでみたところ、一見すべて同じ自転車に見えるものの導入時期の違いからか、フレーム形状やハンドルの角度、左手部分にある操作パネルなど若干の仕様の違いがあるようです。基本的にはどの違いも些細なもので普通に乗る分にはまず気にならないかと思いますが、ハンドルに関しては、一部の車両では水平方向にハの字の角度を付けて絞り込まれているものがあり(車番からするとおそらく新しめの個体?)、まっすぐなハンドル形状の従来型車両とはやや感覚が違います。

各ポートへの車両の配備台数が偏らないよう、定期的にスタッフの方がトラックで自転車を運んでバランスを取っているので、ラッシュ時を除けば借りる自転車を選ぶ余地がないシーンは少ないはず。バッテリー残量やサドルの高さ(調整できますが)、仕様など、ある程度都合の良い車両を選んでいけることが多いので特に困ることはありませんでした。


(キャパオーバーな状態のポート。これでも一応返却はできる)

baybike、というよりドコモ・バイクシェアのシステムではどのように車両を管理しているかというと、自転車に取り付けられたユニット(車体後部の操作パネルがある部分)に、携帯電話網を使った通信機能や鍵の制御機能、ICカードリーダーや車両の現在地を把握するためのGPSなどが内蔵されています。基本的に車両側に必要な装備を詰め込んでいるシステムなので、専用駐輪場である「ポート」の設備は簡易的な物で済むことが特徴です。

ポート側に必要なものはと言えば、実質的には車両が接近した際に返却場所として認識させるための「ビーコン」だけでポートの役割を果たしています。自転車の置き場所を示すために簡易的なラックが設置されていますが、良くも悪くもそれ自体は返却の判定には一切関係がなく、ビーコンの近くに自転車を置きさえすれば返却できます。

ユーザー視点では「ポートに来てみたら埋まっていて返却できない」といったリスクがない一方で、管理側からすると特定のポートに自転車の返却が集中してあふれてしまう可能性があるかと思われますが、そこは適宜、先述のように車両を移動させて配置を適正化することで問題が起きないよう維持されているようです。また、62ヶ所にまでポートを増やせた背景には、このシステムによる設置の容易さも一役買っているのでしょう。

baybikeの使い勝手


ここまで触れてきたシステムや車両の面では、全国各地で展開されているドコモ・バイクシェアの他のサービスと大きく変わらず、これと言った重大な欠点や不満は感じませんでした。現在国内で展開されている自転車シェアリングサービスの中では、ドコモ・バイクシェアによる運営またはシステム提供のところが比較的多く、どこでも均質なサービスが受けられるのはドコモ陣営のアドバンテージかもしれませんね(それだけに、エリアごとにユーザー登録をしないといけないのが弱点だとは思うのですが……)。

地理的には、埋立地ばかりの平坦なエリアが大半を占めているので交通手段としての自転車との相性は良いと思います。眺めの良いところが多くレジャー用途でも楽しめますし、みなとみらい地区を中心に自転車レーンがある区間もあります。また、baybikeのエリア内には、海側からみなとみらい線・根岸線・横浜市営地下鉄(ブルーライン)・京急本線の4つの鉄道が通っているものの、いずれもこの区間では横浜駅から放射状に伸びているような位置関係で、相互の沿線同士の行き来はあまりしやすい方ではありません。エリア内に住んでいる・勤めている方が足として使うケースを考えても、baybikeは有用でしょう。

逆に「baybikeで行かない方が良いな」と思ったのは、桜木町駅付近の「紅葉坂下」のポートから西側(野毛方面)と、「港の見える丘公園(フランス橋)」のポートから南側(山手方面)。全ポートを回ってみて、この2ヶ所だけは段違いにしんどかったです。どちらも「電動アシスト自転車なら楽に登れる」という雰囲気ではなく、むしろ電動アシスト+シェアサイクルとしての装備でかなり車重があるこの自転車ではかえって辛い可能性もあります。幸いなことに、どちらの坂も坂の上下にポートが配置されているので、自分の自転車ではなくシェアサイクルだからこそできる「上りは乗り捨てて、下りだけ乗る」という選択もありだと思います。

まとめ


半日かけて約30kmを「baybike」で走行、2018年6月末時点で設置されている全62ヶ所のポートを回ってみて、やはり7年前の最初の実証実験の場に選ばれだけのことはあり、観光用途・日常用途の両面で意義のある、自転車シェアリングサービスと相性の良いエリアなのだなと実感しました。筆者自身、長く横浜に住んでいますが今回初めて通った場所も意外とありましたし、たまにはこんな旅をしてみるのも新しい発見があるかもしれませんね。