「RX100M5A」レビュー、高級コンデジの定番機種がマイナーチェンジ

2018.08.12 カメラ ライター:__agar

もはや高級コンデジとしてはすっかり定番となっているSONYのRX100シリーズ。7月13日に発売された「RX100M5A」という新機種を購入して実際に使ってみたのでレビューします。

「RX100M5A」とは?


SONYのコンパクトデジタルカメラ「Cyber-shot」の上位モデルであるRXシリーズ。その中でも、いかにもコンデジらしい手頃なサイズ感のボディに1型センサーを載せたRX100シリーズは、価格やサイズ、画質といった要素のバランスの良さもあって根強い人気を誇っています。

スマートフォンのカメラの高性能化に伴いジャンル全体として縮小傾向にあるコンデジ市場にありながら、2012年発売の初代「RX100」以来、好調な売り上げを維持しており、今では「高級コンデジ」というカテゴリーの代名詞といっても過言ではない地位を築いているシリーズです。

初代「RX100」の登場後は、マルチインターフェースシューを搭載し拡張性を高めた「RX100M2」、光学系を刷新した上にEVFを内蔵した「RX100M3」、高速化や動画性能の強化を図った「RX100M4」「RX100M5」と、年1回のペースで新機種が発売されてきました。

これらは“後継機”としての発売ではなく、多くのモデルが併売されてきたことも同シリーズの特徴です。単純な性能向上ではなく、例えば外付けのフラッシュやEVFが必要なユーザーにはM2、動画や動体撮影がメインのユーザーにはM4といったように、各世代で別のターゲットを想定してラインナップに幅を持たせています。


前置きが長くなりましたが、今回ご紹介する2018年7月発売の「RX100M5A」は、そんなRX100シリーズにおいてはこれまでと少々異なる立ち位置です。型番からも想像が付くかもしれませんが、先代の「RX100M5」の純粋な後継機種として作られています。

ハード的には変わっていない部分も多く、マイナーチェンジ版といった雰囲気。M5“A”を名乗っているのは型番の「DSC-RX100M5A」だけで、パッケージや本体上部には先代と変わらない「RX100Ⅴ」という名が記されているのです。

ではM5から何が変わったのか?というと、一番大きな違いとしては、画像処理エンジンの「BIONZ X」が最新のRX100M6準拠のものに変更されています。そのほか、AF性能や連写性能の向上であったり、ソフトウェアで言えばカスタムキー設定やUIの変更など細かな違いがあります。荒っぽい言い方をすれば、中身がRX100M6に近付いたRX100M5といったところ。

一方、発表時に少し話題になっていましたが、M5からM5Aで削除されている機能もいくつかあります。Eye-Fiカードをサポートしないことに関してはEye-Fi側が終息してしまったので致し方ないところかと思いますが、PlayMemories Camera Appsの削除はよく利用している方にとっては痛いところかもしれません。多くのユーザーに影響するような大規模な機能削除はされていないものの、利用している機能によっては要確認ですね。

そう聞くと「それならRX100M6を買えば良いのでは?」と思われるかもしれません。しかしM6は従来のRX100シリーズとは大きく方向性の異なる高倍率ズーム機なので、「中身は最新が良いけれど、用途的にはこれまでのRX100シリーズの方向性が良いな」という方にはM5Aが向いているのではないでしょうか。

やはり迷う、「RX100M6」との選択


よほど明確な目的を持っていない限りは、この機種を買う上で、1ヶ月先に発売された「RX100M6」の存在を考えずにいられる人は少ないのではないかと個人的には思います。筆者もご多分に漏れず、一度はこの2機種をどう選ぼうかと迷いました。

だって、M6すごいですよね。これまでとほとんど変わらないサイズのボディに、24-200mm(35mm判換算)のレンズですよ。間違いなく撮れる世界が広がると思いますし、とても便利なカメラであろうことは想像に難くありません。

それに、家電量販店の店頭でM6を触ってみて別のことに驚きました。筆者は2年半ほど前に「RX100M4」を一時期使っていたのですが、その頃の最大の悩みは“寄れない”ということでした。

RX100M3~M5Aに搭載されている24-70mm相当のレンズは、広角端でしかほとんど寄れません。物撮りをする場面……言い方を変えれば「正しい形でアップに写したい場面」の多いガジェット系のブロガーとしては正直厳しいなと感じていました。その点、M6のレンズは中間あたりの焦点域でも相当寄れます。M5Aを選んだ後の今でも、こればかりは正直うらやましいです。

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(2015年秋、RX100M4で撮影)

しかし、先に述べたように、RX100シリーズは各機種で異なるキャラクターを持っています。結局は「どれが優れているか」ではなく「どれが自分の用途に適しているか」を見つめ直せば、自分が買うべき機種は自ずと決まるのではないでしょうか。

筆者の場合で言えば、もし「ブログを書いていくための機材としてのカメラが欲しい」あるいは他にカメラを持っておらず「1台で何でもこなせるカメラが欲しい」と思っていたら、きっとRX100M6を選んだと思います。

実際には、私はメインのカメラとしてX-H1という頼れるミラーレス機を持っていますし(関連記事)、あくまで今回求めていたカメラ像は「無理せず毎日持ち歩けて、いざという時にそこそこ撮れるカメラ」「ツーリングなどの荷物を減らしたい場面でも迷わず連れて行けるカメラ」でした。

そして、目的から来る優先順位としては、高倍率ズームによる便利さよりも画質。RX100M6のレンズは高倍率ズームと引き換えに少し暗くなっていて(それでも十分すぎるほど凄いですが)、小さな1型センサーで有効に使えるF値の範囲を考えると、その“少し”は大きいなとも思いました。そんなわけで欲張らずに、そして爆売れ状態のM6の誘惑に釣られずに、自分が必要とする領域で間違いなくパフォーマンスを発揮してくれるであろうM5Aを選ぶことにしたのです。

改めてこうして比較検討してみると、M6が発表された時は「ちょっとRXっぽくない方向性だな」などと思ってしまいましたが、ユーザーの目的に沿う選択肢を提供するというRX100シリーズの根幹は変わっていないなと思います。単純な新型、旧型の関係ではないだけに、ある程度カメラ自体や自分の撮りたいものが分かっていないとかえって選びにくいんじゃない?とは老婆心ながらに思ってしまうものの、やはりある意味懐の深いシリーズではありますよね。


完全にRX100M5Aのレビューからは脱線した余談ですが、前の段落の続きを少しだけ。


もし、「何が違うのか分からない」「撮りたいものがしっかりとは決まっていない」という状態であれば、まずはRX100M3を選んでみるのが個人的にはおすすめです。

理由としては、毛色の異なるM6を除いたM3以降の機種(M4、M5、M5A)は、目的にマッチする「これだ!」というものがない限りは、差額分の違いを感じにくいと思われるからです。基本性能はあまり変わっておらず、AFや連写、動画撮影などの性能が世代を追うごとに向上していたり、EVFや電子シャッターなどの装備が改良されているといった細かなブラッシュアップが中心で、大枠はM3で完成されているといえます。

M3とM4以降の差額は決して「これから写真を初めてみようかな」という人にとって小さな額ではないと思いますし、「現時点で最高の物を手に入れたい」と思うなら話は別ですが、少しでもコスパ的な部分を意識するならM3がおいしいところだと考えます。差額であちこち出かけてたくさん撮ってみる、なんて考えも良いかもしれませんね。

開封・付属品など

長くなりましたが、RX100M5Aのレビューに戻ります。まずは付属品をチェック。

パッケージはシリーズ共通のデザイン。先述の通り、ここにはあくまで「RX100Ⅴ」と書かれているので、最新機種を買ったという感じはあまりしません。知らないと「注文したのと違う機種が来たぞ!」なんてことになりそう……と思ったり。


本体のほかには、バッテリー、USBケーブル、ACアダプタ、ハンドストラップ。右側のパーツは、ネックストラップを取り付ける場合に使います。


付属品ではないのですが、筆者が毎回本体と合わせて購入している純正アクセサリーもついでにご紹介。液晶保護フィルム「PCK-LM15」とアタッチメントグリップ「AG-R2」です。

「PCK-LM15」はごく普通の保護フィルムと言ってしまえばそれまでかもしれませんが、ある程度厚みがあって丈夫ですし、フィルム自体の黒枠部分にSONYロゴが入っているという純正品でしかできない仕様なので、付けても素の状態とあまり変わらない外観が保てる点が気に入っています。


「AG-R2」は、標準状態では平らなRX100シリーズの前面に、わずかながら指を掛けられる突起を付けるアクセサリー。しっかり握り込めるとまでは行かないものの、デザイン的に違和感のない範囲でホールドしやすくできるので、やはりあった方が良いかなと思います。


外観


ブラックのボディーとそれを横切る線、右下に入った青いツァイスのロゴ。RX100シリーズといえばこれ、というお馴染みのデザインです。


ボタンやダイヤルの配置もこれまで通り。細かいことを言えばボタンの印字が変わっている箇所があるので、一応この写真1枚でも「M5かM5Aか」の区別は付くのですが……それが分かってしまう人はほぼ間違いなくこのシリーズのマニアでしょう。


上部にはフラッシュとEVFを内蔵。レンズ周辺の配置などを見ると、よくこれだけの装備をこのサイズに詰め込んでいるものだと相変わらず感心します。


液晶モニターの部分は、2軸ヒンジで上下に可動します。どうも剛性が足りないというか、閉じた時の一体感がないというか……コンデジとしては決して安くない10万円クラスのカメラとしての、作りの良さといったものはあまり感じられません。

もっとも従来機種と比べて何か見劣りするということではなく、その点に関しては良くも悪くも従来通り。そもそも所有感や高級感を求めるカメラではなく道具として、コンパクトなサイズの中で実現できる最大限のパフォーマンスや機能を追求した物がRX100シリーズなのだろうなと思います。

同じRXシリーズでも、RX1RⅡなどになるとさすがに価格相応の質感であったり、似たような仕組みのポップアップ式EVF1つ取っても上品な動きをしたりするので、この辺りはやはり設計思想の違いが感じられますね。

「RX1R II (DSC-RX1RM2)」を買いました


高級感についてはさておき、RX100シリーズのデザインそのものはシンプルでよくまとまっています。コンデジといえば大体こんな形をイメージするよね、というようなあっさりした形状かつ小柄なボディーですから、被写体や用途によってはこの良い意味での存在感や威圧感のなさが重宝している人も多いのではないでしょうか。そういった意味では、初代から6年近く、大幅に手を加えることはせずにこのデザインを保ってきたことは英断でしょう。

悪く言えば“普通すぎる”デザインであることは否めないものの、小さくとも目立つ赤字の「T*」や青いツァイスバッジからは、知らない人が見れば普通のコンデジ、でも見る人が見れば「おっ、SONYのあれか」となるような適度な主張があります。撮る側も撮られる側も必要以上に肩肘張らずにいられる、丁度良いバランスで成り立っているデザインだと感じました。

作例・使用感


実際にRX100M5Aを持ち出し、風景や料理、夜景などのシーンで試し撮りしてみました。以下の作例はFlickrにアップロードしたものを埋め込んでありますので、拡大して見たい方や撮影時の設定を見たい方はリンク先でご覧ください。

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まずは、画角のイメージを掴みやすそうな作例から。上の写真は広角端(24mm相当)で撮ったものです。最近はスマートフォンのカメラでどちらかというと広角寄りのレンズを搭載する機種が増えているので、ある意味では“現代の標準画角”とも言えそうな、多くの人に馴染みのある画角なのではないかと思います。

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同じ地点から望遠端(70mm相当)で撮るとこんな感じです。およそ3倍程度のズーム倍率で、一眼レフやミラーレスの標準ズームレンズに近い焦点距離をカバーしています。よほど極端な広角や望遠のレンズが必要なシーンを除けば、普段使いでは大抵のシーンをカバーできるでしょう。

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焦点距離をおさらいしたついでに、レンズのF値との関係についても先に触れておきます。RX100M5Aに搭載されているレンズはM3/M4/M5と同じ「Vario-Sonnar T* 8.8-25.7mm F1.8-2.8」。上の作例は、広角端の8.8mm(24mm相当)/F1.8で撮影しています。

広角端と望遠端で開放絞り値が異なる、言い方を変えれば“通し”ではないズームレンズなので、開放に設定している場合は当然、ズーム操作に応じてF値が変動していくことになります。各焦点距離での開放F値を探ってみると(以下、35mm判換算の表記で統一)、24mmではF1.8、24mmでは25mmではF2.0、26mmではF2.2、28mmではF2.5、32mmからはF2.8でした。

つまりは、レンズの明るさという観点では広角端のごく一部だけが美味しいところなのですね。最短撮影距離と焦点距離の関係もこれに良く似ていて、ズームレンズで寄って撮る時のセオリーとも言える「少し引いて、望遠で撮る」を忠実にやるよりも、広角マクロ的な使い方をした方がぐいぐい寄って行けるレンズです。

M3からM5Aまでの機種に共通することですが、単純に焦点距離とF値だけをスペック上で見ると「明るくて標準ズーム相当の焦点距離をしっかり押さえた使いやすそうなレンズ」に見えるものの、実際に触ってみると「本気で撮る時には広角単焦点のように、そうでない時は便利な標準ズームとしても使える」という方が実態に近いような、結構クセのある構成のズームレンズだと感じます。

もちろんフルオートでただ無心にシャッターを切る分には気軽に使えるカメラなのですが、そこから先へ踏み込むとうまく実力を引き出してやるには意外と頭を使います。ある程度カメラの知識がある人がじっくり触ってみるとレンズに関しては世間で言われているほど“万能選手”ではない部分が見えてきて、このギャップが見かけによらずじっくり使っても面白いカメラだなと個人的には思っています。裏を返せばそこが用途に合わなかったりするとイライラすると思うので、購入前に一度は店頭で触ってみた方が良いと思います。

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RX100M3とそれ以降のRX100M4/M5/M5Aは、センサーとレンズというデジタルカメラとしての根幹の部分で何か決定的な違いがあるわけではありません。では何が磨かれてきたのかといえば、「AF」「連写」「動画撮影」。動く被写体に対しては高級コンデジというカテゴリーの中では他を寄せ付けない実力があると思います。ライブビューの応答速度や撮影後の処理速度なども代を追うごとに良くなっていますし、常識的なコンデジらしいサイズに収まったボディとあわせて「シャッターチャンスを逃さない」という点では心強いですね。

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丁度良い作例を用意しそびれてしまったのですが、M3から搭載されている「内蔵NDフィルター」はRX100シリーズらしい装備だと思います。単純に1台目需要を想定した「ちょっと良いコンデジ」として作っていたらきっとそんなニッチな物は搭載しないと思うのです。一眼レフ・ミラーレスユーザーのサブ機として中級者以上が使うことも考えた機種だからこその装備でしょう。

一般的なNDフィルターの用途として考えられる「水の流れを撮りたい」「流し撮りをしたい」といったシャッタースピードを遅くしながら露光量を落とすための使い方ももちろんですが、(コンデジとしては十分大きいものの)小さな1型センサーを搭載するこのシリーズではそうでない場面でもけっこう役立ちます。

筆者の場合はRX100シリーズを使う時は特別なことがない限りF4.5までしか絞らないようにしているのですが、まぶしいほどの晴れの日など「明るすぎるけれどこのセンサーでこれ以上は絞りたくない、シャッタースピードも被写体的にこれ以上速くできない、ISOもこれ以上は拡張感度だ」というような場面。そんな手詰まりの場面でも数回ボタンを押すだけで、NDフィルターという飛び道具で解決できるのは助かります。限られた範囲でやりくりしてパフォーマンスを引き出すのが楽しい機種だからこそ、有効な手札を1枚多く持てる安心感は大きいです。

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M5AのイメージセンサーはM5と共通ですが、画像処理エンジン「BIONZ X」が改良されています。これは先述の連写性能などの処理の高速化に繋がっているだけではなく、描写の改善や高感度ノイズの低減といった画質面でのアップデートでもあります。

結論から言えば感動するほど「高感度がきれい!」ということはなくスペック相応の限界はあるので、ここは旧機種からの買い替えで両方使い比べられる人であれば体感できるのかな?といったところ。そうは言っても素性は良いので、細かく見ればもちろん大きなセンサーを搭載する機種には敵いませんが、十分見栄えのする写真は撮れると思います。

まとめ


高倍率ズームレンズを搭載した話題性の高いM6の影に隠れてしまっている印象は否めないものの、RX100M5Aは従来の路線を踏襲した正統派のマイナーチェンジ版です。日常使いのサブ機や荷物にならない旅カメラとして、これまで通りのRX100シリーズらしい魅力のある機種だと感じました。

M3→M4→M5→M5Aと、動作やAF、連写などの「速さ」と「動画性能」に重点を置いたアップデートが続いているので、そろそろメインの静止画撮影で多くのユーザーに刺さるテコ入れがあっても良いのではないかとも思うものの、裏を返せばそれだけこのクラスの機種としては完成された機種ということでしょう。M4やM5から今すぐ買い替えるべきかと問われればその答えはノーですが、今からRX100シリーズを買おうということであれば、世代を重ねて熟成されたM5Aを選ぶのは予算が許せばありだと思います。