全部入りのマルチモードPC「ThinkPad X1 Yoga(2017/第2世代)」レビュー

2018.12.04 PC・Mac・周辺機器 ライター:__agar

モバイル向けのThinkPad Xシリーズの中でも、プレミアムモデルという位置付けのX1シリーズ。14インチながら13インチクラスの筐体サイズに抑えた狭額縁設計とカーボン素材による軽さが売りの「X1 Carbon」、Yogaシリーズのような変形機構をThinkPadと融合させ、ペン入力にも対応した「X1 Yoga」、ラップトップ顔負けの妥協のない性能をタブレットに詰め込んだ「X1 Tablet」といった個性的かつプレミアムモデルとしての名に恥じない機種が揃ったシリーズです。



(写真:ThinkPad X1 Carbon。第5世代の2017年モデル)

記事執筆や画像編集といった使い方が中心、言い方を変えればペン入力やタブレットとして使えることが必須ではない使い方をしている筆者にとっては、X1シリーズを選ぶならやはり王道のX1 Carbon。実際、以前使っていたこともあります。

ところがどういう巡り合わせか、あまり縁はないと思っていたX1 Yogaを手にすることに。先述のように「用途的に自分ならX1 Carbonかな」と思っていた一方、店頭などでX1 Yogaを見かけるとキーボードの変形機構が格好良かったりと小さな憧れはありました(そもそも、結構な高級機ですしね……)。約1ヶ月、メインPCとしてX1 Yogaを使ってみて感じたことや、どんなマシンなのかをお伝えしたいと思います。

使用モデルと構成


筆者が使用しているX1 Yogaは2017年モデル(第2世代)で、ハイエンド寄りの構成。CPUはCore i7-7500U(Kaby Lake)、メモリは16GB、ストレージは512GBのNVMe SSD、ディスプレイは2,560×1,440(WQHD)のIPS液晶です。2017年モデルのX1シリーズといえば、ThinkPadらしからぬシルバーカラーの登場も話題になりましたが、やはりThinkPadに馴れ親しんでいるユーザーとしてはブラックが落ち着きますね。

ほぼ最上位構成に近いモデルなので使っていてほぼ不満はありません。直近で使っていたPCが「XPS 13(9370)」、Uプロセッサでありながら待望のクアッドコア化を果たした第8世代「Kaby Lake-R」のCPUを搭載する機種だったので、Lightroomの書き出しなど重い処理をしている時はやや遅いなと思うこともありますが、こればかりは新しい物を知ってしまっていると仕方がないところでしょう。

X1シリーズは、ThinkPadでは一部の機種を除いてあまり重視されてこなかったディスプレイ品質にも力を入れているシリーズです。X1 Yogaの場合、2017年モデルではWQHDの有機EL(OLED)、2018年モデルでは同じくWQHDのHDR液晶がオプションとして用意されています。残念ながらどちらでもなく普通のWQHD液晶のモデルを使っているのですが、これでも単体で見る分には十分良い物に思えます。

外観


天板は特に変わったところはなく、他のThinkPadと同じような作り。2018年モデルはThinkPadロゴがシルバーから黒になり、赤いX1ロゴが入っているのですが、控えめな新Lenovoロゴ+馴染みのあるシルバーのThinkPadロゴが入ったシンプルな2016~2017年モデルの天板がシンプルで格好良いかなと個人的には思っています。


底面はX1 Carbon同様、比較的すっきりしたデザイン。しかし、2in1モデルでもネジを外せば簡単に開けられるのはThinkPadらしいところ(ただ、X1 Yogaの場合は開けても出来ることはそう多くないのですが……)。


X1 Carbonほどではないまでも十分に薄く、一通りの端子も揃っています。タブレットモードでの操作を考慮して、電源ボタンは右側面に配置されています。


充電はUSB Type-C経由。今時のノートPCですね。


microSDカードとSIMカード(WWANモデルの場合)のスロットはヒンジ側にあります。

そして、排気口もヒンジ側に。おそらく変形機構の兼ね合いなのだろうと思いますが、右側から排熱するX1 Carbonを使っていた時は「マウスを使うと気になるなあ……なぜここに……?」と小さな不満点でした。X1 Yogaの配置なら、ラップトップモードでも横持ちのタブレットモードでも手に触れる部分からの排熱が気になることはなく快適に使えます。

4つのモードに変形


X1 Yogaは、ラップトップモードとタブレットモード、そしてその中間のテントモードとスタンドモードの4つの形態に変形できるマルチモードPCです。

まずラップトップモードから触れておくと、個人的にはこのモードではほとんど使っていません。というのも、約1.4kgの14インチPCを手持ちで使うという場面になかなか出会わないため。タブレットとして使う時間が長いのであれば、同じ2in1 PCでもキーボードを着脱できる分離型の方が楽だろうと思います。ただ、「普段は普通のノートPCとして使いたいけれど、時々タブレット代わりに使えると便利なシーンがある」というような方にとっては魅力でしょう。

タブレットとして使い倒すには画面のコーティングがやや心許なく、タブレットモードで少し使った後にラップトップモードに戻すと、ソフトウェアキーボードの表示位置にくっきりと指紋が……といった残念な状態に。頻繁にタッチ操作を使うのであれば保護フィルムなどを貼った方が良さそうです。


ただ、タブレットとして手持ちで使う場面は限られる一方、変形機構と並ぶX1 Yogaのもう1つの特徴であるスタイラスペンを使うにはタブレットモードが最適。少し脱線しますが、X1 Yogaのペンは本体内に収納できるのが良いですね。「マグネットで取り付けておける」といった仕組みのライバル機もありますが、やはりそれなりの磁力があってもどこかに引っ掛けて落とす心配はしてしまうと思います。この手のペンって結構高いですしね……。しっかりしまっておけるのがスマートで安心です。


タブレットモードとペンの相性、という話に戻ります。「タブレットモードで置いて使う」というシーンでは、X1 Yogaは他の360度回転するヒンジを備えるタイプの2in1 PCより一歩先を行きます。なんと、画面を裏返すとキーボードが完全にフラットになるという妙に手の込んだギミックを備えているのです。もちろんトラックポイントも一緒に沈み込みます。やや高さは低いものの四隅に簡易的なゴム足も付いているので、キーボード面を机に伏せて置くことに抵抗なく使えます。

ちなみに、このキーボードの収納ギミックは通常の向きに折り畳む際にも一定の角度を境に機能します。つまり画面を閉じた状態でも持ち運んで力がかかっても、画面にキーボードの跡が残りにくいという隠れたメリットもあるのです。

さらに、この一風変わったギミックを備えながらも、肝心のキーボードの打鍵感を犠牲にしているわけではないところにThinkPadならではのこだわりが見えます。X1 Carbonの上質なキータッチには及ばないと個人的には感じましたが、やや方向性が違うのでこちらが好みという人もいるかも。ただ、クリックボタンやセンターボタンも平らな形状となっていてやや位置関係がつかみづらく、特にセンターボタンはストロークが浅く押し心地が曖昧なのは惜しいところ。


(テントモード)

ラップトップモードとタブレットモードの中間、そして画面だけを前面に向けて立てるという点ではかなり利用シーンが近いと思われるテントモードとスタンドモード。あまりこの2つの使い分けにはピンと来ていないのですが、置き場所の奥行きがあまり確保できない場面ではテントモードの方が使いやすいでしょう。ただ、そう狭いスペースで14インチもあるPCを取り出して使うかと問われると微妙なところですが……。


(スタンドモード)

個人的には、このタイプの2in1 PCを紹介する時には必ずと言っていいほどおすすめするイチオシの使い方がスタンドモードにあります。極端な例ですが「Windowsタブレットは使わない、ペンもタッチパネルも使わない」という人であったとしても、外でも家でも1台のノートPCを使っているなら、そして近い条件で通常のラップトップと回転型2in1 PCの両方が選べるのであれば、この使い方のためにあえて2in1 PCを選んでも良いと思います。

外出先では通常のラップトップとして内蔵キーボードやトラックポイントで操作、そして自宅ではお気に入りの快適なキーボードやマウスを使って作業するといった運用がこのスタンドモードを使うと格段にしやすくなります。例えば、時々ネットで見かける「ノートPCの上にこだわりのキーボードを置いて使う」というような使い方をするのであれば、こちらの方が自然なポジションで使えるはず。

まとめ


薄型軽量という分かりやすく誰もが多少なりとも恩恵を受けられるメリットを持った「X1 Carbon」と比べると、「X1 Yoga」は、相手に画面を見せる使い方、あるいはスタイラスペンでイラストを描くといったように、利用シーンと紐付いた明確な目的がある人が選ぶ機種という印象を持っていました。実際、差額も小さくないので「なんとなくX1 Yoga」ということはあまり無いと思いますが、その多機能ぶりはクリエイティブな用途に限らずとも役立つ場面は少なくないでしょう。

14インチというディスプレイサイズはモバイルノートとホームノートの1つの境目とも言え、モバイルを中心には考えない、あるいは持ち歩くとしても車移動がメインといった方であれば、X1 Carbonの軽さを取るよりも、少し予算を足してX1 Yogaを選んだ方が得るものが大きいケースは意外とあるのではないかな、と実際に使ってみて感じました。